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魚のヒミツ−魚と毒−フグ毒

フグ毒 美食家を魅了する味覚とは?

フグ落語に“ふぐ鍋”という噺がありますが、その中に「フグは食いたし命は惜しい」という一節が出てきます。それほど昔からフグは美味しい食べ物として世間に知られていたようです。また、今では下関のトラフグとなれば最高級品として扱われ、なかなか口に出来るものではありません。しかし、そんなに美味しいものでも一歩間違うと、命に関わる場合があります。今でも、年に何人かの人が病院に運ばれるケースが出ています。さて、そんなフグにはどんな毒が隠されているのでしょうか?

フグ毒の成分

フグの仲間のほとんどが体のどこかに毒をもっており、無毒のフグはごくわずかです。このフグ毒として特に有名なものはテトロドトキシン(TTX:tetrodotoxin C11H17O8N3)と呼ばれる化学物質で、毒性は青酸カリの数百倍と言われています。このTTXは、摂取すると神経間の伝達を阻害し、しびれ,麻痺,痙攣,呼吸困難等の中毒症状を引き起こし、大人でも数mgも摂取すれば致命的になる程の猛毒です。その他の毒として、ハコフグの仲間は皮膚にパフトキシンという毒を持っています。

毒で身を守る

フグは敵から身を守るために外的に襲われそうになった時など、皮膚から多量のテトロドトキシンを放出するようです。すると敵はそれを感じ、コイツを食べるとマズイ事になる、もしくは美味しくないモノと判断し、フグを避けるそうです。フグは体に蓄えた毒で相手を殺すというよりも、食べたら危険だぞと警告を発しているのでしょう。従って、フグを素手でつかんだりした時は、手についたヌメリを十分に洗い流すなどの注意が必要です。

毒の蓄積

元々フグは毒を持たない魚のようです。最近の研究によると、一部の細菌(アルテロモナス菌,ビブリオ菌など)によりフグ毒が造られている事が確認されており、その細菌類を食べたプランクトンや海洋生物を、更にフグが摂取することでフグに毒が蓄えられるようです。それを裏付けるような研究結果が H16.5.29付けの新聞に掲載されていました。それによると、長崎大学水産学部において独自の養殖技術(稚魚の時から無毒の餌を与え、有毒生物から隔離して育てる実験を実施)でトラフグ肝の無毒化に成功したと伝えております。ただし、毒の有り無しは見た目では判断付かないそうです。実用にはもうしばらく時間が掛かりそうですが、安心してフグを食べられる日が来るのは、そう遠いことではなさそうです。

もしもの時の対処法

中毒症状は卵巣などの有毒部位を摂取してから30分〜数時間で現れるようです。中毒症状が出たら、とにかく体内からいち早く毒物を吐き出して下さい!必要に応じて人工呼吸等の救命処置を施し、大至急病院での治療を受けて下さい。現在のところ有効な解毒剤は無いようです。

フグを食す

フグは種類によって毒を含む部位が異なります。まずはフグ調理免許を持ったプロが調理したフグを食べることが絶対です。半端な知識で素人が調理して食べると、チョットお腹をこわした程度では済みません。ふぐ料理には、刺身を筆頭に鍋、白子、空揚げ、塩焼き、干物、ヒレ酒等々美味しい食べ方は尽きません。極めつけは、石川県にある“フグの卵巣の糠漬け”です。あの猛毒フグの卵巣を塩漬けし更に糟に漬けること2年、すると微生物により無毒化し、ご飯のおかずや、酒の肴にはもってこいの珍味が出来上がります。人間の食に対する飽くなき追求心には脱帽です。

参考まで 東京都市場衛生検査所のサイト〔食用にできるフグと食用に出来ないフグ〕


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