魚のヒミツ−魚と毒−シガテラ毒
シガテラ毒 安全な食卓は有り得るのか?
シガテラ毒?あまり馴染みの無い名前だと思いますが、温暖化や環境破壊の影響もあってか、今まで南方の暖かい海での話しでしたが、最近日本でも問題視されつつあるものです。
シガテラ毒の成分
シガテラ毒として最も有名なものがシガトキシン(Ciguatoxin C59H84O19)です。毒性の強さは驚くなかれ、あの猛毒で知られるフグ毒のテトロドトキシンよりも数十倍も強いと言われています。その他にマイトトキシン、スカリトキシンなどシガテラ中毒を起こす科学物質が見つかっています。マイトトキシンはシガトキシンより毒性が更に上回るようです。
シガテラ毒による中毒症状は、摂取後、約30分から数時間ほどで現れ、腹痛,嘔吐,下痢などの食中りの症状が起こり、血圧低下,関節痛,筋肉痛,運動障害などの症状が現れます。特に顕著に現れる症状として、ドライアイスセンセーション(普通の水が極端に冷たく感じたり、暖かいものが冷たく感じたりする)と呼ばれる知覚異常があります。重症の場合は、神経系の障害により、麻痺,痙攣そしてショック状態となり、昏睡し死亡に至る(死亡率は低い)場合があります。また、始末の悪いことに症状が数ヶ月に及ぶ事があるそうです。
毒の蓄積
シガテラ毒もフグ毒のように、元々その魚には無かった毒素が食物連鎖により体内に蓄積される厄介な毒素です。一番の原因は珊瑚礁域のハリケーンや大規模な開発、船舶の座礁などにより、サンゴ礁が破壊される事で発生する渦鞭毛藻(ウズベンモウソウ)類によって作り出されると言われています。このプランクトンを食べた小魚が更に大きな肉食魚に食べられ、それを食物連鎖の頂点に立つ人間が食べることで中毒として発症するようです。自然界から人間への反乱とでも言うべきでしょうか?
シガテラ毒を持つ魚
南方系の魚に多く見られるようですが、その数、驚く無かれ数百種類と言われています。一例を挙げると、バラフエダイ,オニカマス,ウツボ,バラハタ,マダラハタ,カンパチ,ヒラマサ,イシガキダイ,ギンガメアジ等等等。私自身、ここに記載している数種類の魚は口にしており、美味しい魚でももちろんあります。
こんな風に例を挙げるとなんだか不安にもなってきますが、ここに挙げた全ての魚がシガテラ毒を必ずしも持っている訳ではありません。あくまでも可能性のある魚ということであり、普通に国内で流通している魚はそうそう問題ありません。無暗に怖がる必要はありません。ただし、南の暖かい地域へ旅行される際は、この手の魚がいたら食べる前に一度確認された方が良いかもしれません。
もしもの時の対処法
中毒症状はシガテラ毒を持つ魚を摂取してから30分〜数時間で現れるようですが、普通の食中毒と見分ける事が大変困難です。中毒症状が出たら、ドライアイスセンセーションが発症しているかを見極める事が大事になります。もし、この症状が発症したら、大至急病院に急行し、専門の治療を受けて下さい。